年を取った社長が、昔の戦利品でいっぱいの部屋にひとりで座っていました。そして孫からの一本の電話が、彼に再びペンを握らせました。
トロフィーのほこり
李明搬了把矮凳,坐到前面。
李明は低い腰掛けを持ってきて、飾り棚の前に座りました。
架子上一排,最大的那个是二〇〇五年的,他用袖口擦了擦上面的灰。
棚の上にはトロフィーが一列に並んでいて、いちばん大きなものは二〇〇五年のものです。彼は袖口でその上のほこりを拭いました。
玻璃上映出他的脸,比上刻的那个名字老多了。
ガラスには彼の顔が映っていて、トロフィーに刻まれた名前よりもずっと年老いて見えました。
桌上的座机三个月没响过一次了。
机の上の固定電話は、この三か月一度も鳴っていません。
他把杯子放回原位,手停在半空,又轻轻挪正了一点。
彼はトロフィーを元の位置に戻しました。手は空中に止まったまま、もう一度そっとまっすぐに直しました。
縁がめくれた古い地図
他从抽屉底下抽出一张地图,边都卷起来了,还沾着茶渍。
彼は引き出しの底から一枚の地図を引き出しました。縁はめくれ、お茶の染みもついています。
李明
二十三岁那年,就靠这张破图走了一千多公里。
二十三歳のあの年、このぼろぼろの地図ひとつを頼りに、千キロ以上も歩いたのです。
图上有个用红笔画的圈,旁边歪歪扭扭写着“老周请客”四个字。
地図の上に赤いペンで描かれた丸印があり、その横には「老周请客」という四文字が、ゆがんだ字で書かれていました。
那天他们没钱住店,几个人挤在路边的小庙里熬了一夜。
その日、彼らは宿に泊まるお金もなく、数人で道ばたの小さなお堂に身を寄せて一晩を明かしました。
如今老周不在了,这张图也再没人看得懂上面的。
今では周さんはもういなくて、この地図に描かれた記号を分かる人も、もう誰もいません。
孫娘からの電話
座机突然响了,他愣了一下才接起来。
固定電話が突然鳴って、彼は少し呆気にとられてから受話器を取りました。
孫娘
爷爷,老师让写一篇“家里最老的人讲故事”,我能写您吗?
おじいちゃん、先生が「家でいちばん年上の人が話してくれる」という作文を書くように言ったんです。おじいちゃんのことを書いてもいいですか?
李明
我有啥好写的,不就是做了几年买卖嘛。
「俺に何を書けばいいんだ、ただ数年商売をやっただけなんだから。」
孫娘
可妈妈说,您年轻的时候比谁都呀!您写下来嘛,我照着念。
「でもお母さんが言ってたよ、おじいちゃんは若いころ誰より度胸があったって!書いてよ、私がそのまま読み上げるから。」
挂了电话,他盯着那张旧地图看了很久。
電話を切ったあと、彼はその古い地図をいつまでも見つめていました。
ふたたびペンを手に取る
他翻出一个旧笔记本,第一页空了二十年。
彼は古いノートを引っぱり出しました。最初のページは二十年ものあいだ白紙のままでした。
在纸上顿了顿,他先写下“老周”两个字。
ペン先が紙の上で一瞬止まり、彼はまず「老周」の二字を書きました。
写着写着,他忽然想起庙里那夜,几个人冻得直,却笑个没完。
書いているうちに、ふとお寺で過ごしたあの夜のことを思い出しました。みんな寒さに足を踏み鳴らしながら、笑いがいつまでも止まらなかったのです。
李明
那灰啊,让它落着吧,故事可不能也跟着。
あの埃か。積もるままにしておけばいい。ただ、物語だけは埃をかぶせたままにしてはいけないよ。
窗外天快黑了,台灯下,那一页终于不再是空的。
窓の外はもうすぐ暗くなり、スタンドの灯りの下で、あのページはついに白紙のままではなくなりました。